クリニック通信

第31回 上顎癌

 

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 鼻腔の周りには左右4つずつ空洞があり、これを副鼻腔といいますが、上顎洞は副鼻腔のなかで最大の空洞で鼻腔の外側に位置します。この上顎洞に発生した癌を上顎癌と呼びます。今回はこの上顎癌についてお話します。

 上顎癌の発生には副鼻腔炎が関与していると考えられています。副鼻腔炎を長期間(数十年)にわたって患っていると、洞内部の繊毛上皮が扁平上皮に変化する場合があります。これを扁平上皮化生と言いますが、この変化が進み、次の発癌過程を経過すると扁平上皮癌が発生すると考えられています。したがって上顎癌のほとんどが扁平上皮癌です。上顎癌は肺癌や乳癌などに比べるとその発生頻度は少なく、しかも最近は減少傾向にあります。これは近年慢性副鼻腔炎が減ってきているためと考えられています。

 上顎癌の症状は癌が上顎洞内に限局している状態では自覚症状がないことがほとんどですが、副鼻腔炎と同様に鼻閉、膿性鼻漏、頭重感などの症状を呈することもあります。癌が増大し、上顎洞の骨壁を破壊して周囲の組織に浸潤するとその進展方向によって様々な症状を引き起こします。内側に進展した場合は鼻腔を圧迫し、鼻閉、鼻出血、悪臭のある鼻漏、頭痛、涙が出るなどの症状でます。上方に進展し、眼球周囲にある骨を破壊すると眼が突出したり、眼球が偏位し、物が二重に見えたりします。下方に進展し、歯、上あご、口腔内に浸潤すると歯茎が腫れたり、歯痛、上あごの腫れなどがみられます。前方に進展し、顔の皮下組織に浸潤すると顔が腫れたり痛みが出たりします。側方の頬の骨に浸潤すると頬が腫れたり痛みが出たりします。後方に進展すると頭痛、眼球突出、眼の動きの障害、視力障害などがみられます。上顎洞は周囲を骨で囲まれているため、外部には進展しにくいですが、洞内に限局している場合は症状が出にくく発見が遅れがちです。先ほどの症状を自覚して来院する時には癌はすでに進行している場合が多いです。

 診断は他の癌と同様、視診、触診、画像検査、病理組織検査となります。視診では鼻腔内や上あごに癌がみられることがあります。触診では顔面の腫脹や、圧痛、骨の欠損、歯茎や上あごの腫脹をみます。画像検査としてCTMRIなどを組み合わせて判断します。最終的には、鼻腔内や上あごの視診で見える部分や、上顎洞の骨の一部に穴を開けて直接上顎洞の中を観察し、腫れている部分から組織を採取して病理組織検査を行います。

 一般的には進行癌は広範囲の外科切除で対処しますが、上顎洞の上方には眼球等の重要臓器があり、また術後には顔面の変形もおこり、むやみに切除を大きくするわけにはいきません。上顎癌の治療では手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた三者併用療法が広く行なわれています。化学療法を併用した放射線治療を行い、その治療効果に応じて追加の手術治療を行います。頸部リンパ節に転移が出現した場合は頸部郭清術を行います。

 上顎癌は症状が出現するのが遅く進行癌で発見される事が多いですが、頸部リンパ節への転移は他の頭頸部癌に比べて少ないので、局所のコントロールができれば予後は比較的良好です。鼻症状が長引く場合は耳鼻咽喉科を受診してください。今回の写真は久しぶりのクッキーです。広場で遊びました。奥にはプリンがいます。

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